2017年8月1日火曜日

(156)里山に道を拓く <その十・葉月>


 ある日、畑仕事を終えて物置に戻ると、閉め忘れた引戸からダンボールの箱が出てき

た。目を見張って身構えると四つ足が見える、ヨロイを被ったハクビシンのようだ。食い

モノを探していたのだろう、相手は猫のような俊敏さとは真逆でノソノソと歩き、脅かし

てもうまく歩けない。両脇と長い尻尾に張り付いた3枚の粘着板を庭木にこすりつけて剥

ぎ取ろうとするが取れない。

 厄介な荷物に歩行がままならず、小さな里山に戻っていった。

 バングラディシュの難民が、殺戮を恐れてカルカッタに流れ込んだ。蒸し暑い夜、道に

は黒い塊が延々と続き、スエタ匂いの中を歩くと、やがて裸電球の薄明かりは路肩に眠る

黒い肌、生き物か屍かわからない様相を映していた。いま、空腹の細い手で我が足首を掴

まれるのかと怯える様は、悪夢の地獄絵の中にあった。

 美術館、寺ではない、曼荼羅だ。

半世紀前の若かった頃を想起した。
 

   全ての生き物に神が宿る ヒンドウーの大地

   さまよえる異教の野良びとは 飢えている

   白い歯に血が滲む 立ち上がれない 土色の手を伸ばす

   お主は何という生き物か 憤怒の神に椰子酒を届けよう

                            会員 片岡一郎


 
 
 

 

 

 

 

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