2018年6月1日金曜日

(243)里山に道を拓く<その20・水無月>

 
 山際の老木、子供の頃から大杉だった。

 台風で撓る大杉、たっぷり雪をかぶった大杉に里山に嫁に来た女たちは

怯える。

 村の歴史を見守った老木と共に、独りよがりで野にあることを喜びながら

大丈夫ダョと言うが、怖さの感度はみんな違う。組合長は大森の大杉を

何本も切った。

 バインブルグ、この地名の響きに憧れていた。中国新疆とカザフスタン

国境に近い雪山に囲まれた高地にあり四国の面積に等しいという広大な

湿地帯の草原に、長い白蛇の姿カイドウ川がある。

人間という天敵のいないこの地で、春、産卵が繰り返される<白鳥の湖>

桃源郷である。

 イーニンからこの湿地帯までの天山山中には西の国に向けて無数のミサイル

基地があるという。

 …弓を捨ててほしいと、ジークフリードに頼むオディット…

 …きっとあの世で結ばれますように…

台風が来ると 婆ちゃんは 家を空ける

野生の湿原 雛を育てる白鳥   

威嚇するミサイル 兄ちゃん 危機ってなんだ  

ゴミ箱に捨てろ ちょっと待ってくれ 酒瓶にまだ残ってる

                         会員 片岡一郎
 
 

 

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