国と国が地続きのヨーロッパなどと比べて、島国の日本では、日ごろ、
「国境」を意識することが少ない。2017年夏から「日本の国境に行こ
う!!」キャンペーンが展開され、旅の一つの形になりそうだ。その背景
は、4月に施行された「有人国境離島法」という法律だ。全国8都府県の
71島が、特定有人国境離島に指定され、国と関係自治体が“島の振興”に
取り組んでいる。11月6日から9日まで、FDA(フジドリームエアライ
ンズ)のチャーター機で、アイランドホッピングツアーが実施された。駆け
足だったが、対馬、種子島、福江島(五島列島)を巡った。国境は、国と国
を隔てる壁ではなく「出会いの場」であってほしいと強く感じた。
◇
福江島は、キリシタンの歴史を秘めた五島列島の一番南の島だ。久賀(ひ
さか)島、奈留島と合わせた3島が五島市で、若松島、中通島の2島が新上
五島町に属している。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界
遺産登録を目指している。
五島全体で50の教会があり、このうち、福江家には13教会ある。中で
も、堂崎天主堂は1908(明治41)年、五島で初めての洋風建造物とし
て完成した。キリシタン迫害に遭い、殉教した「日本26聖人」(1862
年、列聖)に捧げられている。教会の庭には、その一人「聖ヨハネ五島」の
殉教像があり、教会の中は、キリシタン資料館にもなっている。
日本にキリスト教を伝えたのは、フランシスコ・ザビエルで1566年の
こと。教科書で習うが、その17年後、福江島に修道士のアルメイダが訪れ
ている。そして1587年、豊臣秀吉がキリシタン禁教令を出し、苦難が始
まる。
ようやく明治に入り、信仰が自由になった後の1895(明治28)年、
井持浦(いもちうら)教会で、「ルルド」の模型建設が始ま
り、4年後に完成した。ルルドは、ピレネー山脈のふもとの
フランスの小さな町だが、聖母マリアが18回出現したとい
う巡礼地だ。マリアが教えた「奇跡の泉」に信仰が集まっ
た。井持浦教会に、日本最初の「ルルド」が完成すると、信
者の霊泉地になった。
ヨーロッパの文化と交流する福江島だが、古く遣唐使の時代から大切な航
路だった。唐に渡り帰国した真言宗の開祖「空海」の足跡も島にあるが、大
海を往来する船の守り神は大瀬崎灯台だ。1879(明治12)年に完成
し、東シナ海の安全を見守る。日本の灯台50選に一つで、丘の上から見下
ろす絶景は、感動的ですらある。50キロ先までも届くという光は、国境の
島の未来を照らしているようだ。
(写真は上から 堂崎天主堂、井持浦教会堂のルルド、大瀬崎灯台、旅の
フィナーレ・福江空港の夕焼け)
0 件のコメント:
コメントを投稿