里山の中腹には、無縁の墓石や取り残された台座がある。
ある日、地主の立会いで話を聞いた。
「この杉林は墓地でした。私の先々代のおじいちゃんが土葬された墓が
あり、子供の頃はお盆によくお参りしましたが、近年村の共同墓地に移し
ました」
草薮に、彼女は合掌した。
ガンジス河支流にあるネパール・パシュパティナート寺院の石段に築かれた
ガート(火葬場)に枯れ木、薪が積まれている。白い布に包まれた亡骸を
男たちは聖なる川面にその足先を濡らし、薪の上に乗せる。
長男が僧侶から預かった火をつけると炎が立ち上がり、サリーをまとった
女たち家族の驚愕の叫びが続き、絶えない。
やがて、屍と薪が崩れ落ちるとともに、泣き叫ぶ力も消えた。
そして、くすぶる黒い塊は無造作に河に落とされた。
ホタルが飛び交う蒸し暑い初更 青白い火の玉が
ふわりふわりと里に向かう 向山の焼き場から
老人の語りは 幼子を凍らせた
焼けた匂いを消そうと 残るラム酒もあとわずか
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