2017年8月31日木曜日

(159)里山に道を拓く <その 拾壱・長月>


 青春の頃、里山から東京の学校を振り出しに、就職して出稼ぎとなった。今から20数
 
年前の新聞社のデスクの頃、一枚のハガキが配られた。
 
 
「私はニューヨークに赴任しています、成田に戻る機内で貴紙を見て、著名な雑誌THE
 
NEW YORKERのシンボルが広告紙面にあり驚きました。気になります」。直ちに事の成り行
 
きの調査を促し、短期間に報告書を作った。折しも、音羽の某週刊誌が数回に渡って〇〇
 
新聞叩きの真っ最中!、「大新聞○○は、弱小プロダクションいじめ。無能なkデスク」と
 
内部資料を元に数ページの告発。

 
 同じ釜飯の大スクープに酔う記者の晩年の仕業、内部資料の横流しかと思うと唇さみ
 
し。泉下の輩に合掌。

 
 俺はね、通勤電車の前列には立たないよ(ヤラレルカラ)。自慢げに聞こえた。

 
 里山では、代が変わると土地が細るという。ヨソ様の竹やぶを切り広げ杉苗を植えてい
 
く。家の裏山の裾を削って広くする。人目のつかない所で、この地では「地クジリ」とい
 
う。

                                   

    煙突ウガ高イイノデ サゾヤオ月サン 煙タアカロ サノヨイヨイ

    あさ 朝顔の厠で 子には耐えられない宴の臭

    盃を交わし 売ったヤツ そんなに怯えていたのか

    母が言ってたな 都会は生き馬の目を抜く と

                           (会員 片岡一郎)
 
 
 

 

2017年8月24日木曜日

(158)京阪電車の座席指定・プレミアムカー

 京阪電車の大阪・淀屋橋─京都・出町柳間の特急電車に、2017年8月20日から、プレミアムカー1両(40人)が連結されました。いわゆる近郊電車ですが、4列ではなく3列の豪華な布張りシートになっていて、乗車券と別にプレミアムカー券(座席指定券)が必要です。プレミアムカー券は距離によって500円と400円の2種類で、大人、子どもとも同額です。

 プチ旅行気分が味わえるかどうか、さっそく8月24日に乗ってみました。京都の三条駅を13時22分発、淀屋橋着は14時13分の特急です。乗車券は410円で、プレミアムカー券は、乗車券より高い500円です。シートは、なかなか感触がいいですね。テーブルが付き、リクライニングになっています。

 アテンダントが、プレミアムカーの特製ブックカバー(2000円)と扇子(4000円)を車内販売しています。ブランケットを借りるのは無料で、Wi─Fiも無料でつながります。乗客は、10人ほどでしたが、一般車両が通勤ラッシュの時は、ゆっくり座っていられるので、プレミアムカー券の値打ちはアップしそうです。デートで乗るなら、さらに値打ちがあるでしょう!。(会員・井上年央)








2017年8月11日金曜日

(157)宇治の「通円茶屋」

 京都の宇治といえば、「宇治茶」、「平等院 鳳凰堂」、さらに「源氏物語 宇治十帖」をすぐに連想します。宇治川に架かる日本三古橋の一つ、宇治橋北詰には、「通園(通円茶屋)」があります。宇治の名所の一つです。

 店のパンフレットによると創業は平安時代末の1160年だそうで、源頼政の家臣の太敬庵通円政久が初代です。この主従を物語る狂言に「通円」があります。
 
時代は下り、第十一代通円は、豊臣秀吉の「茶の湯」のために宇治川の水を献上していました。そして近代、吉川英治の名作「宮本武蔵」にも、この通円茶屋が登場します。
 
 今の通円茶屋は、“古民家カフェ”の風情です。スイーツの世界では、ちょっとした抹茶ブームですが、ここの抹茶アイスは逸品です。店内に、一休和尚から贈られたという初代通円の木造=写真下=もあります。                   (会員・井上年央)
 

 

2017年8月1日火曜日

(156)里山に道を拓く <その十・葉月>


 ある日、畑仕事を終えて物置に戻ると、閉め忘れた引戸からダンボールの箱が出てき

た。目を見張って身構えると四つ足が見える、ヨロイを被ったハクビシンのようだ。食い

モノを探していたのだろう、相手は猫のような俊敏さとは真逆でノソノソと歩き、脅かし

てもうまく歩けない。両脇と長い尻尾に張り付いた3枚の粘着板を庭木にこすりつけて剥

ぎ取ろうとするが取れない。

 厄介な荷物に歩行がままならず、小さな里山に戻っていった。

 バングラディシュの難民が、殺戮を恐れてカルカッタに流れ込んだ。蒸し暑い夜、道に

は黒い塊が延々と続き、スエタ匂いの中を歩くと、やがて裸電球の薄明かりは路肩に眠る

黒い肌、生き物か屍かわからない様相を映していた。いま、空腹の細い手で我が足首を掴

まれるのかと怯える様は、悪夢の地獄絵の中にあった。

 美術館、寺ではない、曼荼羅だ。

半世紀前の若かった頃を想起した。
 

   全ての生き物に神が宿る ヒンドウーの大地

   さまよえる異教の野良びとは 飢えている

   白い歯に血が滲む 立ち上がれない 土色の手を伸ばす

   お主は何という生き物か 憤怒の神に椰子酒を届けよう

                            会員 片岡一郎